Artrip 大阪中之島美術館 開館準備ニュース  第2号 / 2019年6月

2021年度に開館予定の、大阪中之島美術館。
開館準備ニュース「Artrip」は、美術館の開館準備の“いま”について、建設の進み具合、美術館やコレクションの紹介、準備室スタッフの活動など、
様々な情報をお届けするコーナーです。(編集・発行 大阪中之島美術館準備室)

大阪中之島美術館・誌上バーチャルツアー ―“黒い箱”の中を探訪しよう!

2021年度に中之島の西側(中之島4丁目)に建つ大阪中之島美術館は、遠藤克彦氏の設計による、地上5階建ての建物です。

この設計案は、海外からの応募を含む60案以上の中からコンペで選ばれました。これに基づいて、3月に建設工事がはじまりました。

3階から5階は真っ黒な壁で覆われ、1階と2階はガラス張り。まるで大きな黒い箱が宙に浮いたかのような外観の美術館建築は、中之島の水辺の風景に、斬新なインパクトを与えることでしょう。

美術館の外観については、すでに各所で多く紹介されており、ご存じの方も多いかと思いますが、その内部はどうなっているのでしょう?ここでは美術館の“中身”を特集し、1階から5階まで、その魅力をお伝えします。

建物を大胆につらぬく、開放的なスペース

大阪中之島美術館の中に一歩足を踏み入れると、縦にも横にも広がる内部空間の、その広大さにまず驚くでしょう。

5階建ての建物の、まさしく1階から5階までを、大きな吹き抜けが貫いており、メインのロビーのある2階から展示室のある4階までは、長いエスカレーターに乗って一気に移動できます。

各階には開放的な大空間が、南北または東西の端から端まで広がります。
広々とした空間の様子は、建物の外観に切り込まれた大きな窓からも伺えます。

「パッサージュ」とは?

建物を縦に貫く大きな吹き抜けと、横に貫く各階の大空間は、どちらもいわゆる「パッサージュ」として構想されたものです。

フランスのパリなど欧米の都市では、大きな建物の中に、人々が外から自由に行き来できる通路があり、商店やカフェが並んでいたりします。こうした空間を「パッサージュ」と言い、建物の中に居ながら、街路を歩いているような感覚でショッピングやグルメを楽しめます。

設計者の遠藤氏は、「さまざまな人と活動が交錯する都市のような美術館」というコンセプトのもとで、この「パッサージュ」のような空間が縦にも横にも広がる建物として設計しました。

まちとつながり、まちの一部となる美術館

美術館の建物へは、1階と2階、どちらからも入れます。
どちらの階も、展覧会チケットがなくても行き来できる無料エリアで、美術鑑賞が目的でも、そうでなくても誰でも気軽に立ち寄れる空間です。

1階にはレストランやミュージアムショップ、講堂が入り、街のにぎわいを一層盛り上げます。

メインエントランスのある2階は、近隣のビルと歩行者デッキでつながります。

近隣にご勤務の方でしたら、お仕事帰りに、ビル伝いに美術館を訪れることができます。
まさしく街の一部。美術館を通路として通り抜けるだけでも、何か面白いものに出会えることでしょう。

さてここで、長いエスカレーターに乗って、展示室のある4階・5階へ上ってみましょう。

大阪中之島美術館のハイライト 5階・企画展示室

2階から4階直通の長いエスカレーターを、さらに乗り継いで、一気に5階を目ざします。

5階は、企画展示室を主としたフロアです。
企画展示室と隣接するテーマ展示室を合わせて、この階の展示エリアの総面積は1,700平米以上。

そして天井高は6メートルで、大型の巡回展に十分対応できるスペースです。
ここで国内外の名品が集う魅力的な大規模企画展を開催し、広く国内外の美術ファンの期待に応えていきます。

この階では企画展のほか、コレクションの大型作品も展示されます。6メートルと言えばかなりの高さですが、私たちのコレクションには高さが5メートル近い作品もあるのです。これらを間近で見たら、きっと圧巻です。

コレクションとじっくり向き合える、4階展示室

4階は、大阪中之島美術館コレクションの展示が主となります。
床面積約1,500平米以上の展示スペースが、吹き抜けを囲むように並びます。

大阪中之島美術館コレクションは、現在すでに5,700点あまり。
19世紀後半から現代までの国内外の美術作品とデザイン作品を、幅広く所蔵しており、これらを様々な切り口によって展示します。

4階展示室の北側には、中之島をまさに活動拠点の一つとしていた「具体美術協会」(1954―1972)を顕彰する「グタイピナコテカルーム」が設けられ、「具体」や現代美術の斬新な表現に触れることができます。

南側の一角に設置されたガラスケースを使用して、日本画の大規模な企画展もここで開催します。

同じ作品でも、展示の仕方や見る人によって、作品の魅力や見どころは様々に変わるもの。
このフロアには繰り返し足を運んでもらい、私たちのコレクションと長く実り多いお付き合いをしてもらえればと願います。

さて、どんな美術館が中之島に建つか、何となくイメージしていただけたでしょうか?
このイメージを現実にすべく、3月から実際の建設工事が始まっています。
今後は、建設現場の様子も随時お伝えしていきます。

☆ 大阪中之島美術館の整備計画の詳細は、「大阪中之島美術館 整備計画パンフレット」
 (PDF版)でご覧になれます
 ・整備計画パンフレット 建築編  ・整備計画パンフレット コレクション編

完成予想図(昼の様子)

完成予想図(昼の様子)

完成予想図(夜の様子)

完成予想図(夜の様子)

2階からの吹き抜け

「パッサージュ」の例:
パリのギャルリ・ヴィヴィエンヌ
Wikipediaより)

4階 エスカレーター降り口

5階 パッサージュ

5階 企画展示室

4階 コレクション展示室
(グタイピナコテカルーム)

コレクションからこの一点

マリー・ローランサン《プリンセス達》と高畠アートコレクション

4人の女性が1匹の子犬とともに微笑む様子が淡い色調で描かれた、幸福感あふれる絵画、《プリンセス達》。20世紀前半のパリで華開いたエコール・ド・パリの画家として、また当時まだ少数派であった女性職業画家として活路を開いた、マリー・ローランサン(1883―1956)の大作です。

この作品は、かつて大阪市内で画廊「アートサロン高畠」を営んでいた高畠良朋氏の旧蔵品です。山本發次郎コレクションが大阪市に寄贈されたことに深く共鳴し、大阪市立近代美術館(当時の呼称。現・大阪中之島美術館)の整備計画に賛同した高畠氏は、山本氏の集めた佐伯祐三に関連の深いエコール・ド・パリの作品を自らも寄贈しようと決めました。

1988年から5回にわたって約130点の作品がアートサロン高畠から寄贈されています。その大半は、ローランサンをはじめ、アンドレ・ドラン、モーリス・ユトリロ、パスキンなど、エコール・ド・パリや関連の深い同時代の作品ですが、佐伯の後輩である荻須高徳や横手貞美の作品も含まれています。

マリー・ローランサン《プリンセス達》1928年

イベント通信

インダストリアルデザイン・アーカイブズ研究プロジェクト シンポジウム「時代を生み出す創造力」

大阪中之島美術館準備室では大学・企業との連携事業として、家電などの工業デザインについて、製品データを集め、往年のデザイナーへのインタビューを行うなど、さまざまな情報の集積をはかるプロジェクト「インダストリアルデザイン・アーカイブズ研究プロジェクト」(IDAP)を、2014年より進めています。

さる3月8日(金)のシンポジウム「時代を生み出す創造力」は、IDAPの年に一度の成果発表の場として、当準備室が連携する大阪工業大学(梅田キャンパス内 常翔ホール)で開催されました。

ゲストスピーカーは、ソニー株式会社の社長と会長を歴任し、現在はクオンタムリープ株式会社代表取締役ファウンダー&CEOを務める、出井伸之氏。基調講演で出井氏は、ブロックチェーンやIoTなどがけん引するテクノロジーの進歩、また産業構造やビジネスの基盤の倍速的な変化にまず触れ、こうした変化を経た現代では、従来のような“モノのデザイン”ではなく、人やモノや情報の流れを双方的に促すいわば触媒となる“モノを超えたデザイン”が重要であると語られました。

続くパネルディスカッションでは、基調講演のキーワードの一つ「OMO(オンラインとオフラインの融合)」にちなんで、これからの美術館も、作品や資料を単に所蔵するだけではなく、情報技術によってその価値を高め、広めなければとの意見が出されました。学生も多く聴講していたことから、彼らに向けての、これからの生き方についてのアドバイスも聞かれ、世代を超えて実り多いシンポジウムとなりました。

シンポジウムの様子 写真提供:大阪工業大学

日 時:2019年3月8日(金)
場 所:大阪工業大学 梅田キャンパスOIT梅田タワー常翔ホール
主 催:大阪工業大学、インダストリアルデザイン・アーカイブズ協議会、大阪中之島美術館準備室
登壇者:出井伸之氏(クオンタムリープ株式会社代表取締役ファウンダー&CEO)、宮岸幸正氏(大阪工業大学副学長)、菅谷富夫(大阪中之島
    美術館準備室室長)

本ウェブサイト内の文章、画像、イラスト等の無断転載を禁じます。    Copyright 大阪中之島美術館準備室 All Rights Reserved.